飲食店の間でプレミアムチケットが流行っています。プレミアムチケットとは10,000円を払うことで11,000円分の食事をすることができるなど、支払った金額以上のサービスを提供するチケットの販売のことです。
5,000円を払うことで5,500円分の飲食ができる、20,000円で22,000円分の飲食ができるなど、金額を問わず10%分のサービスを上乗せすることが主流になっています。
10%分を上乗せすることに論理的な根拠はなく、みんながやっているから真似をして10%を上乗せしているのだと思います。
このプレミアムチケットが飲食店の間で流行り始めたきっかけはおそらく下記サイトに書かれている飲食店の影響だと思います。
飲食業界全体で手を取り合うために。いち早く「みらい食事券」をつくった赤坂の名店wakiyaの取り組み
飲食店がプレミアムチケットを売ってはいけない理由
10%のプレミアムを付けてチケットを販売するということは10%の金利を払ってお金を借りることを意味します。
10,000円を受け取り、11,000円分の飲食を提供するということはそういうことです。これは10,000円を受け取ってから1年後に11,000円分の飲食を提供した場合は年利10%ということになりますが、6ヶ月後に飲食を提供した場合は年利20%、3ヶ月後に飲食を提供した場合は年利40%の利息を払うのと同じことです。
10,000円を受け取り11,000円を現金で返済をするわけではないので、提供する飲食の原価で考えるべきとの意見もあると思います。しかし本来は11,000円を受け取ることができる飲食物とサービスを提供しているので原価で計算するべきではなく、売価で計算すべき事象です。
ぼったくり店でしたらサービスも何もないと思うので、原価ベースで考えても良いと思いますが大多数の一般的な飲食店の場合は原価ではなく売価で考えるべきです。
プレミアムチケットでの調達額
上記サイトに書かれているお店は1千万円を調達することができましたが、1千100万円分の飲食を提供することになってしまいました。100万円の損失です。
銀行や公庫から1千万円を借りた場合の利息と比べると桁違いの暴利です。
金融機関から借りれば調達コストが圧倒的に低いにも関わらず、10%ものプレミアムを付けて資金調達をする理由は金融機関からお金を調達することができない、調達することができないくらいの破綻寸前の状態である、普通に考えて理由はこれしかありません。
自己資金や金融機関からの借入では乗り切ることができないので10%もの暴利を乗せてプレミアムチケットを販売しているのです。販売という名の借入です。
高利であっても厳しい状況の理由が短期間で解消する見込みがある状況であったり、状況が改善するまでの期間が明確な場合は高利での資金調達もありだと思います。
しかし新型コロナウイルスの影響は長期戦になる可能性が高く、状況が改善するまでの期間は全くわからない状態です。
ストーリーを考えて金額と料率を決め、預かったお金をどの程度の期間でどのように償還していくのかを考えたうえでチケットの販売額や料率を決めているのならば良いのですが、おそらく何も考えずに10%のプレミアムを付けたチケットを販売しているのだと思います。
販売と言えば聞こえが良いですが、これは販売ではなくお金を借りているのです。それも10%という事業資金ではありえない高利でお金を借りているのです。販売ではないのです。
受取金額以上である額面のチケットの販売は販売ではなく暴利での借入であることを認識してからやるべきであり、このことを認識しているのであればやるべきではありません。
破綻寸前である飲食店の一か八かの最後の手段であると思います。
飲食店がチケット販売をする場合はこの手法で!
絶対にプレミアムを付けてはいけません。1万円分を受け取り、5千円分の飲食券を渡す。そして使用有効期間は長くても半年、可能であれば3ヶ月から1ヶ月にすること。
この手法であればチケットを販売する意味がありますし、このような方法以外にチケットを販売するメリットは全くありません。
そもそもチケットを販売する目的は客へのサービスではなく、破綻してしまう可能性のあるお店への寄附金募集です。この状況を認めたくないとは思いますがそれが現実です。
破綻の危機に面しているから寄付をしてお店を助けてください。そのためのチケット販売なのです。
そのチケット販売にプレミアムを付ける行為はあまりにも論理性が欠けていると思います。
1万円を受け取り、5千分や8千円分など受け取り金額より小さな額面のチケットを渡す行為はかなり抵抗があると思います。でも今はそんな呑気なことを考えたり言っている状況ではないのです。
この行為をすることに対してプライドが許さないのであればチケット販売はやめるべきです。お店の規模にもよりますが、プレミアムを付けても付けなくても販売金額は大きな金額になる可能性は少なくてガッカリすることになると思います。
飲食店がチケット販売をする意味
チケット販売は客へのサービスではないのです。寄付のお願いなのです。だからこそ使わないことを前提とした条件にすべきなのです。
このことが客に対して申し訳がない、プライドが許さないなどの気持ちが大きいのであればチケット販売をしたらダメです。
必要な資金は金融機関から調達してください。
金融機関からの資金調達だけでは足りないからチケット販売という名の寄付を募るのです。意味のないプライドや変な勘違いをしている場合ではないのです。
本気で返済をする気があるのであればチケット販売はするべきではなく、販売をする場合は寄付してもらうことを前提とした金額と有効期限を設定してください。
チケットの還元率は最高でも80%。1万円を受け取り8千円分の飲食代として使えるチケットを渡す。そして使用期限は6ヶ月。この条件がギリギリです。これ以上条件の良いチケットは発行する意味はありませんので絶対に発行すべきではありません。
実際はチケットの還元率は50%、1万円を受け取り5千円分の飲食代として使えるチケットを渡し使用期限は1ヶ月。
これがベストであり、これができないのであればチケット販売はするべきではありません。
今の時期のチケット販売は客へのサービスではなく、借入か寄付のどちらかであるとの認識を持ってください。
頼るべきは融資
チケットを販売することで寄付をしてもらったとしても年商や融資金額と比べれば微々たるものです。
チケットを購入する客は10万円、100万円を支払えばそれなりの金額貢献をした気分になると思いますが実際は100万円のチケット販売をしても店にとっては微々たる影響しかないと思います。
この圧倒的な温度差も私がチケット販売をすべきではないと書いている大きな理由の1つです。
チケット販売をする場合はオマケ程度の金額にしかならないので、絶対に損をするような設定をせずに寄付をしてもらってください。
必要な資金はチケットでまかなえるはずがありませんので、1日でも早く融資の相談をして借りることができる限界まで借りてください。
事業資金の借入の基本は必要な時に必要なだけ借りることです。手間がかかっても今理屈で考えて必要ではない金額は借りるべきではありません。
しかし今は緊急事態です。短期、中期で収束する可能性は極めて低い長期戦です。
そして借りることができる限度額といっても、皆さんが想像しているような莫大な金額を貸してもらえる可能性は低いです。必要と感じた金額に少し毛が生えた程度の金額が限界額である可能性が高いです。
限界額が想像していたよりも小さくても大きくても、まずは長期戦に備えて1日も早く金融機関に連絡をしてください。
融資に関しては下記サイトに詳しいことを書きました。
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